本文へスキップ

あなたがウサギに出来ることは 獣医師による うさぎ専門情報サイトです。

MAIL alles@usagi.cn

アレス動物医療センター

マミちゃんの如く


 自分の性格を表現するなら「くそまじめで、頑固、短気で、人見知りが激しく、内向的」と、どう考えても接客業に向いていない性格です。
 
 これは謙遜ではなく、客観的に見た、結構まとをえた表現だと思います。

 ホームページをご覧になっている方で、私の診療を受けたことのある方の中には、「そんな風には見えないけれど…」と思われる方がいるかもしれませんが、それは温厚な獣医師の仮面をかぶった、偽物の私です。
 だまされるな!!というところです。

 それでも時々我慢がきかずに本性がちらりと見えることもあり、「あー、確かに!」と思われる方もいるかもしれませんが、そちらが本当の私です。

 他の動物病院の先生にこんなことを言うと怒られるかもしれませんが、私は動物病院というのは「飼い主さんを満足させる」サービス業であり、出来るだけ我慢しようとは思っているのですが、なかなか未熟者で、本性が見え隠れすることもやっぱりあるのです。

 それでも次の患者さんに接するときにはもう、クールダウンしてなければいけないわけで、そんな時にいつも思い出すのが中学校の時の同級生マミちゃん(仮名)です。

 私は石川の田舎育ちですが、ベビーブームの真っただ中に生まれ、中学校は42人のクラスが一学年6クラスと田舎の割には大きい学校でした。
 
 これは若い時分のささやかな自慢で、中学時代ずっと成績は学年で2番でした(ごく短い絶頂期:二十過ぎればただの人)。

 250人の学生中2番ですから、じゃあクラスでは1番だったのかというと、なぜかいつもクラスでも2番。

 それはクラスに不動の首席マミちゃんが常にいたからです。

 このマミちゃん、常に成績一番、性格良し、器量良しと非の打ちどころのない完璧超人で、まじめさ以外何のとりえもない私としてはあまりに強敵すぎるライバルにおおむね戦意喪失の状態でした。

 この文章を読んで、私が彼女に恋心を抱いていたのでは、と思われた方がいるかもしれませんが、残念ながらそれはなく(このころからすでに朴念仁)、ヒマラヤ山脈に咲く高根の花に対し、憧れを通り越して、尊敬すら抱いていました。

 それでもささやかながらも対抗意識はあったのか、よく会話はしても、わからない問題を彼女に教えてもらったことはなかった気がします(もう遠すぎる記憶であいまい)。

 彼女は彼女で私に質問することなどないくらい1番と2番の差は大きかったのですが、そのマミちゃんに一度だけ、数学の問題が分からないんだけどと、相談されたことがありました(数学だけが、ひょっとしたら唯一トントンだったのかもしれません)。
 
 教室の後ろの黒板にマミちゃんは問題内容を書き始めたのですが、3年間のぼちぼち長い付き合いの中、初めて質問されて、せっぱつまってしまったのか、気恥ずかしかったのか、よく問題の内容も見ずに「マミちゃんが分からない問題だったら、俺もわかんないよ」と、朴念仁らしい言葉を投げかけてしまいました。
 
 その瞬間「もう、いい!!」と、はじめて彼女が本気で怒った顔を見てしまいました。

 温厚を絵に描いて額にはめたような人だったので、彼女が怒っている姿など一度もなく、これは相当まずいことを言ってしまった、しくじったと思った時にはもう遅く、彼女は教室の扉を乱暴に閉めて、出て行ってしまいました。

 我ながら、なんと卑屈なセリフと、ただひたすら赤面するばかりで、これまた追いかける度胸のない朴念仁。

 我ながら最低だ、と後悔の念で身もだえしていると、教室の後ろの扉から飛び出していったマミちゃんはすたすたと廊下を歩いて、教室の前の扉から戻ってきました。
 「そんなこと言わずに、ちゃんと考えてよー」と笑顔で教室に入ってきたのです。

 あー、これはかなわないはずだ、と思いました。
 彼女は教室の前後の扉、ほんの数メートルの間に私に対する怒りを解消して、笑顔で戻ってきたのです。

 チョー大人です。
 それに比べて私のなんと子供じみたことか…。
 私だったら、そのあと3日間くらいは口をきかなくなってしまいそうです(チョー心が狭い)。

 それから必死で質問された問題を考え、その答えを導き出せたかどうかはもう覚えてないのですが、成績がどうという以前に、人間として彼女には一生勝てないという変な確信を持ちました。

 さすがにあの域には到達することはできないですし、何よりも私の沸点は彼女よりもはるかに低いのですが、極力怒らないように、怒ってもできるだけ早くクールダウンできるようにと努めております。

 ま、最初っから怒らないのが一番いいんですけどね。

 持って生まれた性分はいかんともしがたく、まだまだ修行が足りんです。


アレス動物医療センター

〒933-0813
富山県高岡市下伏間江371

TEL 0766-25-2586
FAX 0766-25-2584