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アレス動物医療センター

世の中不景気らしいですよ


 世の中不景気らしいですよ。

 って、書くと、うちがすんごく儲かってるみたいですが、別に特別儲かって笑いが止まらないというわけではもちろんないのですが、新聞やニュース、ネットの不景気、不景気を連呼する報道には若干辟易としています。

 実際不景気なんでしょうが、そんなにみんなして連呼しなくても良いじゃないかと思ってしまいます。
 
 不景気でも腹は減るし、靴底は磨り減るし、パンツのゴムは切れるわけで、まったく物を買わずに生きていけるわけではないのですから、どこぞのアパレルショップやコンビニ店は逆に売り上げが伸びているところもあるわけです。

 不景気で困っている人がいる、という報道ももちろん大事ですが、同じくらいの比率で、この不景気こそチャンス!!と、逆境の中がんばっている企業などを取り上げて、
 「まだまだやれるぜ!!」ってな報道もたくさんやって欲しいですよね。

 あんまり不景気を連呼しているうちに、言霊といいますか、なんか財布の紐を締めなきゃいけないような錯覚まででちゃいそうです。

 で、何でこんな愚痴っぽいスタートかというと、最近金銭的な理由で治療を断念する人がときどきいるからです。

 昨年椎間板ヘルニアの患者さんが70件ほどやってきました。
 
 そのうち9割くらいの患者さんは飲み薬なり、注射なり、温熱療法なりでやり過ごした(完治するわけではなく、また再発することが多いので、「やり過ごした」というところなのですが)のですが、この子は手術すべきだと思った患者さんが9件、うち7件が手術をさせてもらえました。

 つまり2件は手術をしなかったわけです。、
 
 一件は先日お亡くなりになったという報告を受け、もう一件はそれ以降お会いしてないので、どうなったかはよく分からないのですが、重度の椎間板ヘルニアの場合、手術をしなかった場合の予後はなかなか厳しく、手術に持ち込めなかったときの私のへこみ具合は、通常より眠りにつくのに2時間ほど時間がかかるくらいのへこみ具合です(わかりづらい)。

 考えてもしょうがないのですが、こう言えば手術を受けてくれたかも、とかああ言えばうまく説得できたかも、とだらだらと考えてもしょうがないことを考えて、寝付けなくなってしまったりします。

 実はデリケートハートの持ち主なのです。

 以前ひとりごとにも書いたように100%治ると断言できる手術ではないので(文献にもよりますが65%の子がよくなるという感じですので)、
「絶対治してみせます!!」なんて、ドラマのようには言えないのですが、やっぱり65%でもやらせてくれよーと思ってしまいます。

 ま、この辺は価値観の違いなのかもしれませんね。

 まあ、椎間板ヘルニアに限らずですが、あまり治療に前向きでない方も時々いるわけで、病院に来られる前から、飼い主さんの中ですでに答えが出ていて、病院に来てはいても、特にこちらの言い分を聞くために来ているわけではない、という方もいます。

 手術などの話を30から40分説明して、うんうんうなづいた挙句
「結局、どうしようもないってことですよね?」と、こっちの意図とは真逆の結論に達してしまう方もいます。

 「いやいや、どうしようもないってことじゃなくて、手術で65%の子は改善するわけで・・・」
と切り返すと

 「100%治るならともかく65%じゃ・・・」とか (→じゃあ何%なら良いんだ!?)
 「費用もかかることですし・・・」とか (→当たり前)
 挙句に
 「家には他にダックスフントがまだ2匹いて・・・」とか (→面倒見切れないなら3匹も買うな!)
 「娘が今受験で・・・」とか (→まったく関係ない)
言いだす始末。

 このあたりで、
 「あー、この人たちは、『やっても無意味ですよ』と言って欲しくて病院に来ているんだなぁ」と思うわけです。

 確かに椎間板ヘルニアの手術になると、長期の入院や点滴、薬、検査を含めると30から35万くらいはいってしまうでしょう。
 確かに高いです。
 
 でも、散々チーズなり、パンなり、にぼしなり、ジャーキーなりと、余計なものを山ほど与えて、肥え太らせて、この病気を作ったのはあなた方じゃないですか!!
 9kgのありえない体型のダックスフントを作っておきながら、それはないでしょう!!
 と、叫びたくなります(が、叫ぶわけにもいかないので、哀愁漂う目線で訴えてみます)。

 100%治るとはいえません。
 賭けと言われてしまえば賭けでしょう。

 じゃあ、お宅のお子さんが下半身不随になったら、65%の改善率じゃ手術をしないとでも言うんですか!?
 これが旦那さんで、ほっといたら尿が出せずに100%腎不全で死んでしまうと言うのに、手術をしないんですか!?
 と、怒鳴りつけたくなります(が、怒鳴るわけにもいかないので、捨てられた子犬のような愛らしい瞳で訴えてみます)。

 ま、価値観の違いはいかんともしがたく、というところですし、たとえ不景気な時代じゃなくても、やっぱりあの方々は手術を受けてはくれなかった気もします。

 ただ、動物を飼うということは、やっぱりなんだかんだとお金がかかるわけで、若くて元気なうちは病気知らずかもしれませんが、年をとれば病気もしやすくなるし、場合によっては手術や入院も必要になるわけです。

 若くてかわいいときだけを散々楽しんでおいて、病気になったからはいそれまで、とはいかない訳で、人間と同じく、だんだん汚い部分や、かわいくない部分や、大変な部分も出てきて、それもひっくるめて「飼う」というのではないかなーと思うのです。

 その覚悟がないなら、そもそも買うな!!
 と、自分の職業にハンデになるようなことを考えてしまいます。

 最近ペット税とか言うものを導入して、買う人を制限しよう(というか、おいそれと捨てたりなどという無責任な飼主を減らそう)という動きもあるそうです。

 そんなもので無責任な飼主が減るのか正直よく分かりませんし、単なる増税じゃないの?とか思っちゃいますが、飼い方の講習受けなきゃ買えないとか、所得に対して何匹までとか(それはさすがにいやらしいか)、何らかの制限はあっても良いのかなー、とか思っちゃったりします。

 少なくとも、学校で、そういう授業とかあっても良いですよね。
 
 情操教育とか言ってペットを飼っておいて、病気になったら治療しないなんて、情操もへったくれもないと思うのです。

 不景気不景気と、縮こまっていては、ますます不景気になってしまいます(たぶん)。

 私なんか不景気に対抗して、いつもは100g128円の豚細切れ肉を買うところを、今日は158円のもも肉買っちゃいました!!

 おー、ささやか〜 


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