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アレス動物医療センター

卒業


 今日は記念すべき日です。
 卒業式なのです。

 こんな時期に?と思われるかもしれませんが、学校の卒業式ではなく、うちの獣医師3号の卒業式です。

 この病院からの獣医師卒業は彼女が初めてで、それもあって、感慨もひとしおというところです。

 一応3年契約で当初病院に来てもらったのですが、おそらく4月から6月の病院の忙しい時期を気遣って、8月いっぱいまでいてくれたのだと思います。

 去年の春に、今年8月いっぱいでの卒業を申し込まれ、もう3年も経ったのかという驚きと、あと1年半で、どれだけのことを教えてあげられるかという焦りと、そして何より娘を嫁に出すような、切ない想いとが同時に押し寄せてきました。

 娘を嫁に出すお父さんの気持ちはもちろん独り身の私にはよくわからないですし、おそらくこんなものではないのでしょうが、それでも例えるなら娘を送り出すお父さんの心境に近いのだと思います。

 福岡県出身の彼女が3年半も一人暮らしをして、獣医師の修業を積むというのは並大抵の努力ではなかったと思いますし、一切顔には出さないですが、苦労や悩みも多かったのではないでしょうか。

 いつも笑顔を絶やさず、やさしい物腰で、後輩獣医師の面倒見も良いというパーフェクト超人のような人柄で、一見はかなげなイメージもあるのですが、その芯は博多っ子で、正義感に厚く、結構頑固で、天然です。

 体調が悪そうに病院で咳をしているときなどに「風邪か?早退したほうがいいんじゃないのか?」と声をかけても
 「風邪じゃないです、ちょっとのどがイガイガしただけです」と、けして己の体調不良を認めず、体調不良を理由に病院を休んだことがなかったような気がします。

 つらい時も、本当はへこんでいるときも、それを他のスタッフに悟らせないよう笑顔でふるまっている姿が印象的で、「あんまり、頑張りすぎるなよ」と言っても
 「頑張ってませんよ!」と答える博多っ子です。

 向上心が高く、この3年の間にめきめき腕をあげ、以前ひとりごとで書いたように、超音波検査の技術は私よりもすでに優れており、私が教えてもらっているくらいです。
 外科手術の技能も私なんかよりずっと丁寧で、早く、今後の修業次第では、もっともっと上達していけるでしょう。

 親馬鹿と言われるかもしれませんが、もうどこの病院に出しても恥ずかしくない立派な獣医師になったと思います。
 立派な獣医師になったとは思うのですが、もっとしてあげられることはなかったかと、いまさらになって思いを巡らせたりなんかもします。
 
 彼女はこののち、福岡県の病院に勤務医として勤め、今度は福岡の患者さんたちのために頑張っていくことでしょう。
 きっとまた、頑張りすぎるのじゃないかと、ちょっと心配です。

 福岡県と富山県ですから、もうちょっとやそっとでは会えないのかもしれませんが、自分の弟子が遠く福岡県で根付くのかと思うと、なんだかこそばゆい気がします。

 彼女が岐阜大学を卒業して、福岡県の病院ではなく、アレス動物病院の門をたたいたのは、このホームページがきっかけだったそうです。
 そう思うと、こんな更新の遅いホームページでも、続けていたかいがあったなぁとしみじみ思います。
 福岡県出身で、岐阜大卒業の彼女と、この病院で3年半も一緒に過ごせたというのは、今にして思うと、結構すごい偶然なのかもしれません。

 親御さんは6年間も遠くの大学に娘を出し、帰ってくると思ったら、もっと遠くの病院に就職してしまい、さぞかし心配されたのではないかと思います。
 ご安心ください。
 驚くくらいのびのび過ごしてました。

 今後どのような成長をしていくのか、とても楽しみです。
 超音波技術をさらに磨くもよし、おとついはリハビリのDVDにえらく興味を持っていたようですし、あるいは今度行く病院の先生の得意分野を盗むのもよいでしょう。
 
 「頑張れよ」と言わなくてもきっと頑張るでしょうし、「あんまり無理するなよ」と言ってもきっと頑張るでしょうから、どう送り出していいのかよくわかりませんが、しいていうなら
 「ありがとう」と言うべきかもしれません。

 この3年間本当によく働き、よく助けてくれ、そして何より人を育てることの喜びを教えてくれました。
 35のおっさんが20代の女の子をつかまえて「ありがとう」もない気がしますが、面と向かって言うのは恥ずかしいので、ひとりごとにこっそり書いておきます。

 3年半、ありがとう、お疲れ様でした、元気でね。

 最後に心残りが一つ、とうとう一度も博多弁を聞かせてもらえませんでした。
 一生懸命富山弁の練習をしているのは見受けられたのですが、博多弁はいくらねだってもやってくれませんでした。
 それだけが、本当に心残りです。

 最後に「んなら」 (博多弁の「またね」?)とか言ってくれないかなと思ったりするのですが、彼女の性格から絶対言わないのはわかってます。

 なにしろ私は獣医師版「お父さん」ですから。


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