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アレス動物医療センター

針のついたネズミじゃないよ

2015/8/31

 最近やたらとハリネズミがやってきます。

 ご存じですか?
 ハリネズミはハムスターやモルモットのような齧歯目ではなく、ハリネズミ目。
 基本的には全く別のものです。
 どちらかと言うとネズミというよりはモグラに近い存在です。

 うさぎのサイトでいきなり出だしがこれかよ、という気がしますが、毎度のことながら大したことは書いてないので、ハリネズミに興味のない方はスルーでお願いします。

 プチブームなのかガチブームなのかわかりませんが、最近ハリネズミの診療が多いこと多いこと。
 本屋に行くとハリネズミの漫画なんかも並び始めて、これは増えてるんでしょうね。

 なので、背信行為ではないですが、最近ハリネズミの本ばかり読む羽目になっています。

 いやかわいいんですよ?
 かわいいんですけど、まだまだわからないことだらけ。

 ハリネズミがきちんと診療できる獣医師もまだまだ少ないでしょうし、そもそもハリネズミを診療対象にしている動物病院すら少ない現状です。
 フードもハリネズミに最も適した栄養バランスなどがよくわからない手探り状態。
 どんな病気が多くて、どんな治療法が適していて、どんな薬が安全で、効果的で・・・というのもまだまだわかっていないことが多いのです。

 海外のデータ等の引用ももちろんあるのですが、飼育数が増えて初めて分かることもたくさんあります。

 例えば昔はシーズー(顔のクチャっとしたかわいい犬)、は小型犬の割に心不全が少ない、と言われていたこともあります(単に私が不勉強だっただけかもしれませんが)。
 ところが日本でシーズーブームが十数年前に来て、その子たちが高齢になった頃には、概ね心不全になってしまいました。
 そこで日本の獣医師走るわけです。
 「あ、シーズーも普通に心不全多いや」と

 海外などはやはり大型犬が多いわけで、日本とは犬種によっては飼育頭数が全然違って、必ずしもすべての動物種で研究が進んでいるとは限らないのです。
 
 ハリネズミが本当にこのままどんどん日本で飼育する人が増えてきて、山ほど病院に来るようになったら、きっと今まで見逃されていた病気などが見つかって、その対策手段を順次考えていかなければいけないのでしょう。

 まさに手探りです。

 十数年前のペレット中心でうさぎが飼われていた時代をなんとなく思い出しますね。
 当時は飼い主さんも、獣医師も不勉強で誤った飼い方、誤った治療でたくさんのうさぎさんが犠牲になっていたと思います。
 うさぎの膀胱結石で猫の膀胱結石用医療食を処方した先生がいた、なんて笑い話(うさぎ的には笑い話では済まない)もあったそうですから、その頃に比べたらうさぎの診療もかなり進んできたのかもしれません。

 とか言って、私がハリネズミに出している薬が、将来実は使わないほうが良い薬だとわかったり、私がやっている手術方法が全然トンチンカンだったり、なんてこともあるのかもしれません。

 ハリネズミを飼ってくれるなとは言いませんが、ただ買う前に翌々考えてから飼ってあげて欲しいのです。

 まだまだ治療どころか飼い方すら確立していない動物ですが、最後まで付き合えますか?
 中にはいつまでたっても人間になれず、ずっとシャーとか言って泡を吹いてる子もいますが、最後まで愛せますか?
 暑すぎても寒すぎてもダメという難儀な生き物なので、おそらく年中エアコンをかけての温度、湿度管理が必要だと思いますが、その環境は整えられますか?
 基本的には個別飼育(一人一ケージ)で、多頭飼育はできない(あるいは別々に世話をしなければいけない)ですが、一人の子を全力で愛せますか?
 近所でハリネズミを真剣に取り組んでいる動物病院はありますか?

 飼ったからには最後までお付き合いするのが筋です。
 よくよく考えず(あるいは調べず)、衝動買いのように買ってきてから、実はハリネズミを見てくれる病院が、県内にはなかった!?なんてことがないように、気をつけてあげてくださいね。

 まずは飼い方の本を読む。
 躊躇なく行ける距離感にハリネズミをきちんと診療してくれる動物病院があるか調べる(人づてではなく、病院にも問い合わせて確認を取る)。
 この辺はうさぎを飼うときにも必要なことですね。
 
「近頃野生のハリネズミが増えています」なんてニュースが流れるのだけは見たくありません。

 まあ確かに、衝動買いしたくなるくらいかわいいんですよね。


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